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2026年04月02日

不動産売買で「売主からの一方的な契約解除」は違約金を払えばできるのか?

不動産売買で「売主からの一方的な契約解除」は違約金を払えばできるのか?

不動産売買の現場では、ときどき売主様から「違約金を払うから契約をやめたい」「手付金を倍返しするから白紙にしたい」という相談を受けることがあります。
しかし、ここで注意したいのは、売主が違約金を払えば、いつでも自由に一方的な契約解除ができるわけではない、という点です。

民法では、違約金は原則として「損害賠償額の予定」として扱われます。そして、損害賠償額の予定があっても、相手方の履行請求や解除権の行使を妨げないとされています。つまり、契約書に違約金の定めがあっても、「違約金を払うからもう終わり」と売主が一方的に決められるわけではありません。買主側には、状況によって契約どおりの履行を求める余地が残ります。

よくある誤解は「手付解除」と「違約解除」を混同していること

この問題で一番多い誤解は、「手付解除」と「債務不履行による解除」をごちゃ混ぜにしてしまうことです。

民法557条では、手付が交付されている場合、相手方が契約の履行に着手するまでは、買主は手付放棄、売主は手付倍額の提供によって契約を解除できるとされています。つまり、売主が手付倍返しで解除できるのは、あくまで手付解除が許される期間内だけです。しかも、最高裁の整理では、売主が手付倍返しによる解除をするには、単に「払うつもりです」と言うだけでは足りず、現実の提供が必要とされています。

では、いつから売主は自由に解除できなくなるのか

ポイントは「相手方が履行に着手したかどうか」です。

この「履行の着手」はかなり重要です。全日本不動産協会の解説では、履行の着手とは、客観的に外部から認識できる形で履行行為の一部を行ったり、履行のために欠かせない前提行為をした場合を指すとされています。実際の裁判例でも、買主側の行為や、売主側の登記準備・境界確定・抵当権抹消準備などが「履行の着手」と認定され、手付解除が認められなかった例があります。つまり、契約後に決済や引渡しへ向けた動きが具体化しているなら、売主はもはや「倍返しで終わり」とは言えない可能性が高いのです。

違約金は「解除するための料金」ではない

ここは特に強調したいところです。

違約金の条項は、「お金を払えば自由に解約できる権利」を売主に与えるものではありません。
本来は、どちらかが契約違反をした場合に、損害額の立証を簡略化するための取り決めです。民法541条は、相手方が債務を履行しない場合に、相当期間を定めて催告し、それでも履行がないときに解除できるとしています。さらに542条では、履行不能など一定の場合には催告なしで解除できると定めています。つまり、解除が問題になるのは、あくまで法律上または契約上の解除原因がある場合です。売主の単なる心変わりや「もっと高く売れそうだから」という理由だけでは、当然に解除権は発生しません。

売主が本当に解除できる主な場面

売主側から契約を終了できる可能性があるのは、主に次のような場面です。

まず、手付解除がまだ可能な期間で、相手方が履行に着手していない場合です。このときは、手付倍返しによる解除の余地があります。
次に、買主側に代金不払いなどの債務不履行があり、催告しても履行しない場合です。この場合は、契約解除や違約金請求が問題になります。
そしてもう一つは、当事者双方が納得して合意解除する場合です。これは一方的解除ではなく、あくまで話し合いで終わらせる形です。

まとめ

不動産売買では、売主からの一方的な契約解除は、違約金を払えば当然にできるものではありません。
手付解除ができるのは、相手方が履行に着手する前までという強い制限があります。さらに、その段階を過ぎれば、違約金条項があっても、買主は履行請求や解除、損害賠償請求などを検討できる立場にあります。したがって、「違約金を払うから終わりです」という売主側の考えは、法律上も実務上も危険です。

実務では、契約書の文言、手付解除期日の有無、履行着手の具体的内容、催告の有無によって結論が変わります。実際の案件では、契約書を確認したうえで、弁護士や実務に強い専門家と方針を決めることが大切です。

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